芭蕉の句


此道や行人なしに秋の暮

出典は『其便』(泥足編)。

 『笈日記』に「廿六日は清水の茶店に遊吟して泥足が集の俳諧あり。連衆十二人。」と前書きがある。

元禄7年(1694年)9月26日、浮瀬亭で巻かれた半歌仙の発句である。

此道や行人なしに秋の暮
   ばせを

 岨の畠の木にかゝる蔦
   泥足

月しらむ蕎麦のこぼれてに鳥の寐て
   支考

 小き家を出て水汲む
   游刀

天気相羽織を入て荷拵らへ
   之道

 酒で痛のとまる腹癖
   車庸

大阪市の大阪星光学院蕉蕪園に「半歌仙」碑がある。

「半歌仙」碑


   人声や此道かへる秋のくれ

   此道や行人なしに秋の暮

 此二句、いづれかと人にもいひ侍り、後「行人なし」といふ方に究(きはま)り、「所思」といふ題をつけて出たり。

『三冊子』(土芳著)

宮城県仙台市の新川生活センター

茨城県行方市の化蘇沼稲荷神社

埼玉県本庄市の本覚院

千葉県香取市の西雲寺

長野県阿智村の広拯院月見堂に句碑がある。

化蘇沼稲荷神社の句碑
   
西雲寺の句碑

   


初案は「曲翠宛書簡」(9月25日付)にある「此道を」。

爰元愚句、珍しき事も得不仕候。少々ある中に、

秋の夜を打崩したる咄かな

此道を行人なしに秋の暮

「人声や此道かへる」共、句作申候。京江戸之状したゝめ候折ふしに御座候而、早々何事をもわきまへ不申候。以上

ばせを

      九月廿五日

   曲翠様

九日、南都を立ちける心を

菊に出て奈良と難波は霄月夜

   秋 夜

秋の夜を打崩したる咄かな

   秋 暮

この道を行人なしに秋の暮

      二十三日         ばせを

   意専様
   土芳様

『枇杷園随筆』

大阪星光学院蕉蕪園に芭蕉「所思碑」がある。


此道を行人なしに秋の暮

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